ナスダック&NY-Dowエリオット波動分析No.391(06/04-20:44)

 もはや知っている方も限られてくる頃合いですが、その昔、「IT(インフォメーション・テクノロジー)バブル」というものが、確かにありました。アメリカ発信のこの好景気は、1990年代後半からいわゆるパソコン事業を中心に始まり、それはインターネット事業へと普及、その末期には「IT革命」と呼ばれる机上の空論により、ネット社会による効率化がインフレなき永遠の成長を生み出すという、夢のようなおとぎ話を世間に植え付けました。

 我が国の時の首相、森首相がIT戦略会議で「IT革命」を「イット革命」と読み間違え、話題になりましたが・・・今、考えると確かに・・・イット革命くらいで丁度良かったのかも知れません(笑)。

Outlook・・・サイクルⅢ波⑤波進行中と考える。

 こうしてナスダックの長期チャートを見ますと1996年12月、グリーンスパン氏による「根拠なき熱狂」は、確かにこの「ITバブルの到来~崩壊」を言い表したものとも受け取れますね。

 古くは情報スーパーハイウェイ構想から始まり、アメリカの全てのパソコンを光ケーブルで繋ぐといったような構想も、いつの間にかインターネットの普及でうやむやでしたが、少なくともこれまでの「モノづくり経済」とは違う角度の産業が発展していったのは事実。当時は「ニューエコノミー」という言葉も囃され、コンピューターにより生産・在庫は正確に管理され、インフレなき永遠の成長をするはずでしたが・・・コンピューターを作り過ぎた辺りから雲行が怪しくなります。 

 我が国ニッポンでは光通信に代表される、当時、「IT企業」と呼ばれる企業の株価は200,000円を超える等、人気化を極めていましたが、とある外資系証券が「それじゃぁ、ソフトバンクの目標株価も200,000円超えで」とやったトコロで鐘が鳴ったような記憶です。あれほど皆が買いたがっていた株は、気が付けば売り気配で値が付かない日が続く・・・光通信は20日間連続のストップ安の記録を保持、ソフトバンクも2000年2月15日、198,000円の最高値を付けた際は時価総額でトヨタを抜き、日本一になった直後から暴落、結果的に時価総額は約20兆円から、一時的に2,800億円程度まで落ち込むなど、とんでもない記録を達成します。

 2000年4月、元気のない日経平均に元気注入・・・のつもりで行った、今や伝説の「採用銘柄30銘柄の大幅入れ替え」が行われます。日経平均の採用銘柄入れ替えは、それまで基本的に意図的・裁量的な入れ替えは行われておらず、当時の市場関係者は驚きます。それでも折からの「ITバブル」ですから、いわゆるオールドエコノミーを外してIT関連企業を採用する事に反対を唱える者もなく、良かれの入れ替えは・・・仇になります。京セラやファナック、東京エレクなどもこの機会に採用された銘柄、今でこそ素晴らしい銘柄ですが・・・正にITバブルの天井株価での入れ替え。泣きっ面にハチとはこの事で・・・(笑)。

 さて2000年当時からの「ITバブル崩壊」、結果的にはその末期となりますが2001年9月11日、世界同時多発テロが起きます。その流れから、その首謀者とされるウサマ・ビン・ラディン氏とアルカイダの引き渡しを要求するも、タリバン政権に拒否された事に端を発するアフガン紛争が起きます。興味深いのは、誰もが「負の塊」と想像する戦争を機に株価が上昇に転じている事です。これはまるで、第二次世界大戦時のNY-Dowとも重なります。

 勿論、この当時は戦費拡大のみならず、FRBによる異例の利下げ・・・確か、3ヶ月間で4回の利下げを行うなど、完全に非常時的な対策を強力に実行した事も大きな要因でしょうが、何れにしてもココから株価は現在に至るまで、その上昇は継続しています。

 今、振り返ると・・・ナスダックの暴落に代表される「ITバブルの崩壊」は、終わってみれば確かに崩壊ですが、その明確なキッカケはよく分かりませんね。リーマン・ショックのような象徴的な出来事があったわけでなく、「気が付けば・・・」といったように株価が崩落を始めたといった印象。

 ITバブルの崩壊・・・決定的な原因が見当たらないこの崩壊は、いわゆる行き過ぎた人間心理の振り子が、その行き過ぎた動きを一気に引き戻すといった、人間心理の普遍性が形を現したとも言えます。1,000p台であったナスダックは、「根拠なき熱狂」との警鐘から僅か2年半弱で一気にその4倍超えまで駆け上がりましたが、その後1年半で元値を割る水準まで暴落した事になります。この暴落について、エリオット波動の観点からはスーパーサイクル(Ⅳ)波と考える事になります。

 この考えに従えば、2002年10月10日1,108p以来はスーパーサイクル(Ⅴ)波がスタートしたと考えられます。このステージは一段下の波であるサイクルⅠ波Ⅴ波により構築される、非常に規模の大きな上昇ステージ。それは2007年10月2,861pにてⅠ波を完了、以降、2008年9月、リーマンブラザーズ破綻による「リーマン・ショック」で翌年3月1,265pまで下落、これをサイクルⅡ波と考えます。

 さてここまでの考えに従えば、1,265p以来はサイクルⅢ波、この波は一段下の波、プライマリー①波⑤波により構築されます。仮にチャート内ラベリングが正しいのであれば、昨年3月安値6,631p以来、かつてないほどのスピード・急角度で上げるこの波はⅢ波を構築する最終波、プライマリー⑤波と見なす事になります。

 昨年3月の急落も正直、その理由が判然とはしませんが・・・あえて呼べば「コロナ・ショック」とでもすれば良いでしょうか。何れにしても急激かつ大きな下落となったものの、現在は既に、それ以前の高値を大きく上回り、そしてこれを「根拠なき熱狂」という人もいなくなりましたね。

 6,631p以来の⑤波について、一段下の波であるインターミディエイト(1)波(5)波により構築されると考えます。仮にチャートラベリングに従えば、現在は昨年9月21日10,519p以来、その最終波である(5)波進行中であると考えます。

 10,519p以来の(5)波も一段下の波、マイナー1波5波により構築され、3月5日12,397p以来はその5波がダイアゴナルトライアングルを描いていると考えます。

 ★目先の展開では「上でも下でも、お好きにどうぞ」ですが、総じて13,925p~13,952pを超えない限りにおいて13,320p、13,198p~13,180pを試したがる可能性。
 
 ★その反面で今後、13,180pをも割り込むと12,825p~12,785pを試す可能性(シナリオ.2)。このケースの考え方としては2月16日14,175p以来の4波継続中であり、それはトライアングルを描いていると考えます。

 ★確率を別として今後の展開で12,116p、そして11,929pをも割り込む下落が訪れるならば事態は深刻、Ⅲ波完了の可能性に留意を。

 さて、オマケはNY-Dow、直近では5月24日No.379にて超長期チャートとともにエリオット波動解説をしています。もっとも、与太話込みですが(笑)。この中では「$34,744を試し、超えられるか。上値を阻まれる限りにおいて、再下落の可能性」を指摘しました。

 現実は$34,744を超えた事で俄かに$33,473にて調整が完了している可能性、目先、$33,998、$33,797~$33,767を許容しながらも、再上昇を想定するのが合理的と考えます。

 ただし、次の新高値更新の局面からは・・・いつ大きな調整が生じてもおかしくないと出来る局面には入るかと、留意を。

(長浜-株式寅さん)

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